2006年6月11日日曜日
雨の日の建て売り住宅は崖の上に佇む
理事長が帰った後、われわれ夫婦はネットで一戸建てを調べまくった。
そろそろ東京23区に帰りたいね、とか、マンションは住み飽きたから一戸建てがいいね、とか。後で考えてみると何と素朴な、いや身の程知らずな欲求であったことか。
23区といっても買えそうなのは練馬や板橋である。上板橋の建て売りをネットで資料請求したら即座に営業マンから連絡があり、今日見学することになった。
見学前にどうしても買いたかった本があった。一つは防災マップ、もう一つは「いい家が欲しい」という本である。
防災マップは今のマンションを買うときにも参考にした。そもそも今のマンションを買ったきっかけは阪神淡路大震災であり、下町の木造家屋密集地帯から逃れて埼玉のど田舎の鉄筋10階建てのマンションに引っ越したのが10年前だ。
「いい家が欲しい」という本は新聞広告で何度か目にした事があった。「建ててしまった人は読まないでください。後悔しますから」という宣伝文句の本である。
一生に何度もない買い物だから、ぜひ読んでおこうと思った訳である。
もう一冊、固定金利の住宅ローンであるフラット35の解説本も買って、営業マンとの待ち合わせ先の上板橋駅に着いた。
営業マンの車に乗って現地に行く間、「金利が高くなるというのでみなさん購入しようとされています」などと言う営業マンの話を聞く。後から知った事だが、金利が上がるというのは最近の格好の営業トークの一つだそうだ。梅雨時には家探しする客が少なくなるが、そういう時期に家を探すわれわれは賢い、などと巧みに客を持ち上げる。
最初に案内された現地は私道の奥の奥、駐車スペースもとれない木造2階建てだった。約22坪の今のマンションよりは広いのだが、1階のリビングが狭すぎて不合格。だがこの近辺にしては格安の3580万円だった。安い理由は駐車スペースがないからだそうだ。近所に駐車場を借りるぐらいは許容範囲なので、駐車スペースが無くても安ければ検討の余地がある、ということが分かっただけでも勉強にはなった。
次に連れて行かれたのは、最初の物件の近くの更地で、建物はこれから建設するという。この土地がまるで崖のようなすごい地形で、基礎工事には苦労しそうだ。車では容易に入れないような場所に駐車スペースつきの住戸を建てるという。ちょっと問題外だ。
最後に連れて行かれた場所は東武練馬から徒歩16分の板橋区徳丸、閑静な住宅街の一角にある木造3階建て。南欧風の漆喰壁の洒落た作りだが、まずこの土地は東武練馬から坂を下ったちょうど谷底にあたる土地だ。しかも敷地の隣を暗渠になった川が流れている。緑豊かで静かな良い場所ではあるが、こんな地盤の悪い所の家に一生住むのはどうか。
中に入ってみると、1階の床は歩くとバコンバコンと大きな音がする。安普請とはこのことだろう。洗濯物を干すのは3階にあるベランダだが、縦に細長いこの建物に申し訳程度に作られたベランダは幅1メートルほど。とても一家3人の洗濯物は干せない。
この時点で女房はわりと気に入っていたようだが返事は保留した。この区画には10棟ほどの建て売りが建っているが、まるでジグソーパズルのように入れ子になったものすごい区画割りである。極限まで土地を細分すればこのようになるのだろうか。問題の家は売れ残っているらしく、当初4580万円だったのが4280万になり、今は特別に3980万円で良いそうだ。
さらにわれわれを引っ張る気の営業マンに対して、午後も別の物件を見に行く予定なので、と言って早々に退散した。
後から考えると、この営業マンがとった手法は業界用語で一発屋と呼ばれる典型的な営業手法であった。客を車に乗せ最初に欠点のある物件を見せ、最後に本命の物件に誘導する手法が一発屋と呼ばれる。悪徳不動産屋の常套手段である。
ちなみにこの物件はわれわれの後一度別の客に決まりかけたがキャンセルになり、今は3580万円に値下がりしているらしい。いやはや。
>>続く
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